Interview with Fumi Lee

グローバル視点で見るデニム産業の未来

世界的なファッションアクティビストであるFumi Lee(フミ・リー)氏。

「衣食住のすべてをトータルしてファッションだと考えている」と語る彼女は、シンガポールを拠点に活躍し、2022年には文化や環境に意識を向けた自身のブランドを立ち上げるなど、グローバルに活動の幅を拡大中です。
自他共に認めるデニムファンであるFumi Lee氏への取材を通し、世界視点で見る児島のデニム産業の未来にフォーカスしました。

日本のものづくりを応援したい

本日もジーンズをスタイリッシュに履きこなしていらっしゃるFumi Leeさんですが、‘’今‘’デニムに注目する理由を教えてください。


デニムの全てに惚れ込んでいるからです。若い時から今もなお、クローゼットにはデニムが並んでいて、デニムを軸に自分のファッションが成り立っていることが分かります。

ファッションを通して自分を表現する中で、最も自分らしいアイテムがデニムです。そして、それでいてオリジナルのスタイルを表現できる。こんな素敵なアイテムはないと思っています。

現在、デニムは世界中で「トレンド」となっていますが、私の思うデニムとは、流行り廃りの波がある「トレンド」というよりも、廃れることのない「大きなファッションのカテゴリーの一つ」であると感じています。加えて、「日本のものづくりを応援したい」という意味を込めてデニムに注目しています。

岡山のデニムというと、知る人ぞ知る存在であり、ファッション業界の方々には有名です。
しかし、「Made in岡山」や「Made in児島」と表記があるわけではなく、海外で販売される際には生産地の名前は消えてしまいます。私はそこに違和感を覚えました。

海外では日本製のデニムが賞賛されていて、誇り高いと思える一方で、「Made in岡山」「Made in児島」をもっと発信しなければならないと考えています。

日本の技術を継承していく世代

児島の地域産業、デニム加工現場を体験する上での癒toRi18㈱を選んだ理由とは何だったのでしょう?


私は「選ばれた」と思っているくらいです。

児島のデニム加工現場は、経験を積んでいるご年配の職人さんばかりだと思っていましたが、癒toRi18㈱を初めて見学した際、若さとエネルギーを感じ、カルチャーショックを受けました。

若い職人さんが多い中、彼らのキャリアは、10~15年の経験がある本物の「職人さん」ばかり。
まさに、日本の技術を継承していく世代なのだと感じ、癒toRi18㈱を選びました。

日本のものづくりのエネルギーを発信すること

―日本の職人技の継承についてふれていただきましたが、その中で児島のデニム産業へ抱く想いをお聞かせください。


職人の「技術」は、繋いでいくことで「文化」になります。

ご年配の方々がいたからこそ今の技術が残っていますし、技術を持っている若い方をサポートすることが「ものづくりの未来」そのものであると考えています。まさに温故知新。

ものづくりの未来を支えるサポートのひとつとして、海外で生活する私のような存在が「日本のものづくりのエネルギーを発信すること」に価値があると思います。

そして、癒toRi18㈱の作業現場には世界に発信すべき活気とエネルギーが満ちていたのです。

彼女自身から生まれる想いやストーリー

―今回、Fumi Leeさんの娘さんもご一緒に児島へ来られたとのこと。「地域産業を娘と一緒に体感したい」と考えたバックグラウンドについても、是非教えてください。


娘や、彼女の周囲の友人は海外生活の方が長いため、今後、日本の魅力を知らないまま海外で暮らし続ける可能性が高くなります。児島の地域産業を通して「本当の日本らしさ」を体感してから、もう一度海外に出てほしかったのです。

加えて、もうすぐ大学に進学する彼女に一番感じてもらいたいものは、「彼女自身から生まれる想いやストーリー」。

例えば、文化を未来へ繋ぎたい、美しい環境を守りたい、などといった「想い」を創り出すキッカケとして、一緒に地域産業に触れる計画を立てました。

「Made in Japan」を世界に発信

さいごに、ファッションアクティビストとして今後の展望を教えてください。


サポートする事、そのきっかけ作りだと思っています。

そのためには、「Made in Japan」を世界に発信し、同じビジョンを持つ企業と連携することが重要であり、今回の経験がその第一歩だと感じています。
職人の技によって連綿と受け継がれてきたJapan qualityも、今担い手不足・後継者不足という深刻な問題を抱えています。
日本の文化継承をサポートする道のひとつとして、海外から日本の地域産業の「現状と魅力」を発信し続けたいと思います。

グローバルな視点を持つからこそ、地域産業や職人の技術に「日本らしさ」の輝きを見つけるFumi Lee氏。
今後もファッションアクティビストである彼女ならではの活動に注目していきたいと思います。

Profile

Fumi Lee

日本、東京で生まれ育つ。イタリア留学をきっかけにファッションやインテリアの世界に魅了されヨーロッパと 日本を行き来する仕事に就く。 結婚後は更にグローバルな生活を送り2012年シンガポール移住をきっかけにファッションコンサルタントとし て活躍。日本を離れたことで再確認した日本文化の素晴らしさ、伝統や職人技を世界中に発信したいと思うよう になり自身のブランドFumiJeanを設立。ライフスタイルを軸に日本の文化継承、そして次世代へ繋ぐきっか け作りに貢献している。日本人初のVogue100のメンバー。

video @Cage Photo